システム思考と新型コロナウイルス

新型コロナウィルスの感染が再び全国的に拡大してきました。私は当初、過去の世界的な感染症の拡大と収束からこの状況がいつ頃終わるのかということを推測し、1-2年程度で収束すると考えていました。しかし、既に1年半近く経過し、その予測は違っていたと感じています。

では、なぜ過去の事例と今回が異なるのかを理解し、その上で歴史とは別の側面から考えてみることにしました。

今回は「システム思考」の視点で検討してみます。「システム思考」とは、現在起こっている状況を複雑なシステムの結果であると考え、包括的な視点で捉え、その解決方法を見出す考え方です。

ではその基本となる「システム」とは何でしょうか。「システム」とは相互に関連した要素で構成され、特定の機能、目的を持つものと定義されます。

では、具体的に新型コロナウイルスの感染状況を図で表してみましょう。

ウイルスは空気中では短時間の生存しかできず、人と人が接触することで体内に取り込まれ生存、増殖します。よって、まず人と人との接触機会が増加することで感染者数が増加します。(左側の図の左の円)さらに感染した人が移動することで、ウイルスが運ばれ、感染者の増加させます。(左側の図の右の円)よって、接触機会が増加することに人の移動が加わることで、時間の経過とともに感染者数が飛躍的に増加します。(右側のグラフ)

この状況の1つの特徴として、感染者との接触から発症までに「遅れ」があるということです。新型コロナウイルスの場合、約2週間と言われています。

このように左の因果関係を示す図(因果ループ図)と感染者数と時間のグラフで関係を表すことができます。

この関係が理解できると、まず現在の感染者数のグラフの推移から、2週間後の感染者数が予測できます。また現在市中での感染者との接触、人の移動状況が推測できます。

次に現在の緊急事態宣言と感染者数の関係を見てみましょう。

現在の状況は、感染者数が一定数になった場合に緊急事態宣言が発出され、外出が制限され、人との接触、移動が制限されます。感染から発症、検査での確定までの「遅れ」があるため、接触、移動が減少した後、遅れて感染者数が減少します。また現在の緊急事態宣言の運用は事前に期限を決め、ある程度の数が減少した段階で解除されます。この状況をグラフで示すと右のようになります。

これらの2つの因果ループ図とグラフを理解すると、感染者数の増加と減少が繰り返される状況がシステムとして把握できます。

言い換えると、現状において「新型コロナウイルスを持続するシステム」が構築されているが分かります。

このようなシステムが構築されていることにより、歴史から推測した期間よりも長い間感染状況が継続しています。

また、この状況が継続することにより、変異株が発生する確率も高まり、更に状況が長期化することが予想されます。

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