持続可能なシステムへの移行

これまで現在の経済、社会システムを継続した場合の「地球の限界が超えた際に起こる未来」について説明しました。

そして「なぜ持続的開発目標(SDGs)を達成する必要があるのか。」について考えてきました。(カテゴリー 持続的開発

また、これまで私たちは17の目標をそれぞれの目標を産業セクター別に分け個別に目指し、目立った効果があげられずかえって現代の課題を抱えるようになりました。

例えば気候変動に影響する「温室効果ガスの削減のみ」を目標とし温室効果ガスを排出しないというだけの理由で環境に多大な影響をおよぼし、政府が公式に公開しているとおり、放射性廃棄物を数万年保管しなければならない(関連記事 原発事故から10年)原子力発電所を再稼働するという方針になりかねません。

17の目標を同じテーブルの上に載せて、他の目標に負の影響がないように、あるいは相乗効果が得られるようは、システム思考で考え抜本的な取り組みが重要であることも説明してきました。

しかし、未だそのような取り組みはできておらず、現在以下のような様々な課題に直面しています。

  • 食料調達の制限
  • 資源の高騰(化学肥料、農薬、鉱物資源、枯渇化)
  • エネルギー価格の高騰(化石燃料の調達制限、枯渇化)
  • 自然災害の巨大化、頻発化
  • 国際・国内物流の滞り

これらの課題を解決するためには、従来型のシステムからどのようなシステムに移行すべきかを考えてみましょう。

1. 持続可能な農業(アグロエコロジー)

持続可能な開発目標を達成するためには、まず農業を「工業的農業」から「アグロエコロジー」(生態系の営みに即した農業)への転換が必要です。

なぜ「工業的農業」から転換する必要があるのでしょうか。世界人口が80億人となった現在、工業的農業を推し進めるほうが、効率的な食料増産に繋がるのではないでしょうか。

長年、「農業の工業化により農業を効率化し、農業所得を高め、後継者を確保できる」とされ、望ましい発展方向だと考えられてきた。しかし、実際には地力の低下と収量の低減、農薬・抗生物質耐性をもった雑草、昆虫、菌の発生、動物福祉の悪化、環境汚染、農家の健康問題、食品安全問題、外部投入材への依存による経営の不安定化と所得の減少、後継者難と高齢化、農村の過疎化と地域社会の衰退等が世界各地で起きた。(【提言】アグロエコロジー基本に 協同組合は社会変革の要 関根佳恵・愛知学院大学准教授 農業協同組合新聞 2021 12月27日)

屋外に出て自然を観察してみましょう。自然の野原、森には多種多様な植物が共生していて、肥料や農薬を散布せずとも、スクスクと育っています。さらによく観察するとそれらの植物の多くは多年生植物で数年以上その場所に存在しています。

それと比べ現在の農地は、単一の植物が広範囲に植えられ、それらの多くが一年生植物です。工業的な経済原則を適用し、「規模の経済」を志向することにより、品種改良をすることにより化学肥料、農薬の使用が必要となり、自然のバランスを崩すこととなり、更にこの修復のために自然に負担をかける対応が必要となり、上記の関根先生の述べるような状況に陥っています。畜産においても同様に本来、草を食べる牛をより乳量を得るために改良を重ね、草以外の餌も食べないと生きられないような体にし、牛の健康や寿命にも悪影響を与えています。

この規模の経済理論は車や電気製品では資源が十分にあれば成り立ちますが、自然、生き物が相手である農畜産業に適用するのは無理があるのです。
よって、より生態系の営みに即した農業「アグロエコロジー」が求められています。

2.地域内循環システム
© 2021 Shinichi Tsuboi, Insight management inc.

上記の図は以前の記事「持続可能な食料システム」で説明したシステムです。食料に関して地域にある資源をできるだけ活用し、外部からの資源の調達を最小限にし、必要な分のみ生産し、消費し循環させるシステムを構築することを示しています。また、より小規模に家庭菜園などを活用し同様な仕組みを各家庭でも作ることも有効です。

エネルギーに関しても、同様に自宅で、あるいは地域で少ない投資で小規模な発電(太陽光、水力など)を行い地域で活用するシステムを構築できます。

これらの地域循環型の食料、エネルギーシステムが構築できると、自然災害の際に、中央からの物流、電力が滞っても、持続でき、初期投資、使用する資源も抑えることができ、物流も最低限になりシステム全体として効率的になります。

3. 分散・ネットワーク型システム
参考 P. Baran 2015 On distributed network

従来の中央に一度集めて輸送する食料システムあるいは、大規模な発電所を建設し電力を各地に分配する多額の投資と維持費用がかかる「中央処理型」のシステムから、各地域で循環型システムの経済・社会を築いた上で、近隣の地域とネットワーク化する「循環・分散処理ネットワーク型」システムに移行することで、現在の「規模の経済」による、環境への負荷を軽減し、「範囲の経済」を中心とした効率的で、災害にも強いシステムへと移行する時期に来ていると思います。