Category Archives: 政策マネジメント

2025年度参院選の争点

1.物価高対策が争点?

多くのマスコミでは、今回の選挙の争点は「物価高対策」との報道を目にします。与野党もこの対策での違いを明確にしているようにも見えます。

しかし物価高が短期的なものであれば、給付金、一時的な減税の短期的な支援が有効かもしれませんが、今回の物価高は短期的ものでしょうか。

物価高の原因は何か

短期的か長期的な性格のものであるかを理解するために今回の物価高の主な原因を確認します。

・原油の値上がりによる石油製品・ガソリンの値上がり

・原料の値上がり

・人件費の高騰(採用難・人手不足)

・輸入品の値上がり(円高要因)

物価高の原因は短期的あるいは長期的な要因か

・原油:長期的要因
理由:有限な資源であること。ピークオイルの考え方から近い将来産出量は減少に向かうこと、緊張が高まる中東情勢

・原料(食料品、化学肥料原料、希少金属など):長期的要因
理由:気候変動による食料生産の不安定化、有限であり特定の地域に偏り存在する化学肥料原料へ依存した食料生産、次世代自動車などに必要な希少金属の有限性と偏った地域で採掘されている

・人件費:長期的要因
理由:国内の少子高齢化および人材のミスマッチング(必要な職種と就きたい職種の相違)

・輸入品の値上がり(円高):長期的要因
理由:円の価値は長期的には日本の産業力を評価する価格に推移する現状の日本の産業競争力を他の主要通貨国(米国、EU)と比較すると比較優位な産業が少ない

以上のように物価高の要因は長期的な要因であるため短期的な給付、減税で解決できるものではない。

2.争点にすべきこと

よって、もし長期的な視点で今後の国の方針を考えるのであれば各政党から打ち出される給付額や減税の比率などで判断すべきではない。

長期的な視点で各党が何をしようと考えているかで判断すべきである。

3.原子力政策

エネルギー政策は長期的な視点でとても影響力の大きい政策です。

近年AIなど利用の進展により電力消費量が格段に増え、これらを今後の日本の経済成長に活用するためには、原子力が必要との論調が目立ちます。

自分で考えなくても答えが得られ便利なので、原子力発電も必要と考える方が多いように思います。

一方で原子力発電を行うと必ず放射能廃棄物(核のゴミ)が作られ、その保管には数万年から数十万年安全に保管する必要があると公的機関である原子力発電整備機構の公開文書で明記されています。(参照記事 原発事故から10年

また、現政権では、直近の原子力の推進に舵を切りました。(参照記事:エネルギー政策の大転換)福島原発で発生した除去土の全国の公共工事での活用を進めようとしています。(記事:除去土の処理方法と場所

さらに、有事の際には原子力施設は攻撃対象となることがウクライナ、イランの事例でも明確になりました。

4.主な党の原子力政策比較

原子力発電推進:自民党、公明党、国民民主党

原子力発電縮小:立憲民主党、社会民主党、共産党

出典:日経新聞記事 参議院選挙2025(公約比較)
   

5.投票することで未来づくりに参加する

まず、投票することで未来づくりに参加することが重要ではないかと思います。また投票の際に目先のお金だけでなく、「次世代に何を遺すか」を考えることも必要ではないかと思います。

もちろん、原子力政策だけで判断すると政党によっては現在の経済・社会体制が根本から変わってしまう可能性もありますので、各党のめざす社会体制も含め政策全体をみて投票することが重要です。