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規模の経済の終焉:50年以内の未来

世界では産業革命以降、埋蔵される豊富な化石燃料を使い鉱物資源を探査、採掘し、それらを原料に大量にものを生産することで販売単価を下げ、大量に消費し捨てるという「規模の経済」システムで、成長を続けてきた。

しかしコロナ禍で世界的な物流網が機能しなくなったことに続き資源を大量に有する国の紛争、戦略的な輸出制限などにより、このシステムの前提である大量に作れることが怪しくなってきた。このシステムをあとどれくらい維持できるかを資源の埋蔵量をベースに考えてみる。

まず化石燃料だが石油、天然ガスは埋蔵量があと約50年、石炭はあと約100年、多くの鉱物資源は50年から100年と推定されている。鉱物資源があと50年から100年分あるのであれば、現役世代が生きている間は問題ないような気もするが、よく考えてみると、これらの鉱物資源を採掘する動力を得るには化石燃料が不可欠である。そうすると結果として現在の産業に必要な鉱物の採掘はあと50年しかできないことになる。(現状二酸化炭素の排出比率により敬遠されている石炭は除外しておく。)そうなると以前の記事(限界を超えると起こる未来)で紹介した1972年に発表された報告書「成長の限界」においてコンピュータシミュレーションで示された資源の枯渇の推移とほぼ一致していることがわかる。

よって、上のグラフのように資源に依存した産業は50年以内に崩壊すると予想される。現在の食料生産に必要な化学肥料原料のうち、リン鉱石、カリウム鉱石の埋蔵量はともに約300年だが、窒素肥料を製造するためには天然ガスと大型の農業機械を使用するためには石油に依存した現在の食料生産今後50年以内に成り立たなくなる。さらに現在の経済モデルの継続により、温室効果ガスを含む環境への影響(グラフで示された公害)は経済活動の結果として遅れを伴い現れ、現在の産業モデルが崩壊した後も進みし、私たちの生活環境が悪化の一途をたどる。よって食料が不足し、生活環境が悪化することで人口が減少する未来が想像できる。

このような未来が50年以内に訪れる可能性があるということを認識し、従来の資源に依存した大量生産、大量消費の規模の経済を資源が枯渇する前に意図的に終焉させ資源に依存しない経済、食料システムに移行することが必要である。

それでは資源に依存しない経済、食料システムとはどんなものか。
みなさんと一緒に考えてゆきたい。

参考文献:

「成長の限界」1972年 ドネラ メドウ他 
化石エネルギーの動向 2020年 資源エネルギー庁
世界の一次エネルギーの需要見通し(環境省)
鉱物資源マテリアルフロー2020 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
平成23年度版 環境・循環型社会・生物多様性白書(環境省)
肥料をめぐる情勢 農林水産省(令和5年5月)